男と本

作曲・作詞 水月やまと

小さいけれど賑やかな国が
そこにひっそりと在りました

白い馬を連れ一人の男が
そこに住みたいとやって来ました

住むことを認められ 男は作家になりました
するとその本が売れ 男は有名になりました

作品の内容は冒険を描いたもので
巷ではごっこ遊びがとても流行りました


気が付いてみると男の本は
飛んで行くように売れました

売る毎に期待され 愛好者達が付きました
刷る毎に金は増え 男は新作を出しました

作品の内容は恋愛を描いたもので
巷では恋する人がとても増えました


その頃 男は部屋で頭を抱えていました
悩みを話すことは出来ませんでした
その為 男は部屋で頭を吊ろうとしました
座椅子を離すことは出来ませんでした


狂う程に筆を執り 紙の上を走らせました
苦痛な日を乗り越えて 男は新作を出しました

作品の内容は殺人を描いたもので
巷では人の数がとても減りました

勇者と魔王

作曲・作詞 水月やまと

深き山へと 仲間を連れ
目指すは宿敵のアイツだ
二つの墓標に 優しく触れ
世界に叫ぶ 「私こそが正義だ」


生まれた朝に運命は もう既に決まっていた
六歳を迎える頃には 親の元を離れた

組まれた教育を受けて 順調に力を付けた
独裁の今を変える為 悪の元へ向かった

当たり前の生活に 憧れたこともあるけど
愛する国の為 私は振るう → 剣を!

月日を重ね 仲間は増え
今こそ出撃の合図だ
躓いてもいい 涙を拭け
静かに唸る 「悪は滅ぶべきだ」


剣は → 数多の血を啜り
鎧は → 兵馬の死を刻む
馬は → 戦火の地を進み
駒は → 煽動の詩を歌う

「君が創り上げた屍を愛する者がいるだろう。
しかし怯むことはない。勝者こそが正義となる」


辿り着いた先 築かれた城
向かうは宿敵のアイツだ
戦友の想いを 込めて剣を
振るいて叫ぶ 「私こそが正義だ」


──こうして世界へと平和が訪れた。

図書館と司書官

作曲・作詞 水月やまと

赤い髪をした女が管理する
今日も寂れた黒い図書館
青い薔薇を持ち入口に佇む
少女の髪色は麗しき銀

誠しやかに流行る噂話
その図書館には秘密がある
数多の人が我こそはと挑み
浪費を重ねては虚しくも散る

秘密へと近づく為に必要なのは鍵
入り口は本棚に…青バラは鍵穴に…少女は地下室に…

仄暗い世界へ誘うのは階段
怯えながらも好奇心は勝つ
音の無い空間に在るのは祭壇
少女が触れると 奴は覚醒める


「私を覚醒させたのはお前か。
覚悟はあるのか?
よろしいならば叶えよう。
お前の願いを……」


銀髪の少女が管理する図書館
赤い髪の女の姿は無く
逃げることが許されないのは永遠
「私の代わりを 今日もただ待つ……」